停電の長期化には非常用電源の確保が重要
災害発生時、特に地震や台風などの大規模災害が発生した場合、人命救助や生活支援において重要とされる「72時間ルール」という概念があります。
この72時間は、救援が届くまでの間、外部からの供給が途絶えた状況で自力で生き延びるための期間を指しているそうです。この重要な期間を乗り切るためには、食料や水、通信手段だけでなく、電力の確保も欠かせません。
特に停電が長期化することが予想される場合、非常用電源の確保は、命に関わる問題となります。そのため、近年、オフグリッドソーラーパネルを使った非常用電源システムが注目されています。
本記事では、このオフグリッドソーラーシステムによる非常用電源のメリット、設置方法、そして72時間対策を考慮しながらお伝えしていきます。
72時間の重要性と災害時の電力問題
災害時における「72時間」とは、人命救助の観点から非常に重要な時間です。日本では、災害発生から72時間以内に救助活動が最大のピークを迎え、これを超えると生存確率が急激に低下するとされています。
そのため、この72時間の間に自力で生存するための対策が不可欠です。
多くの都市部では災害発生時に一時的な停電が発生することがあり、その期間は生活に必要な電力が不足します。特に家族に医療機器を使用している人がいる場合や、通信手段を確保するためのスマートフォンやラジオの充電など、電力の必要性は高まります。
このような時に、オフグリッドソーラーパネルを利用した非常用電源は非常に有効です。
オフグリッドソーラーシステムとは
オフグリッドソーラーシステムとは、一般的な太陽光発電システムとは異なり、電力会社の電力網(グリッド)に接続されていない独立型の太陽光発電システムを指します。
これにより、外部からの電力供給がない状況でも、太陽光を利用して自家発電が可能となります。災害時や停電時に最も力を発揮し、電力供給が途絶えた場合でも電気を使い続けることができるのが特徴です。
オフグリッドシステムの構成要素
- ソーラーパネル: 太陽光を電力に変換する装置。災害時には太陽が出ている限り、電力を生成し続けます。
- 蓄電池(バッテリー): 昼間に発電した電力を蓄え、夜間や曇りの日に使用できるようにするための装置です。
- インバーター: 蓄電された直流電流(DC)を家庭用の交流電流(AC)に変換する装置。
その他、充放電コントローラー、ケーブルなど。
参考になるシステムイメージです。↓
オフグリッド型の同種として言われている完全自家消費は、もう少し大きなものをイメージした太陽光発電システムになります。
非常用電源としてのオフグリッドソーラーシステムのメリット
オフグリッドソーラーシステムは、災害時の非常用電源としていくつかの大きなメリットを持っています。
外部電源に依存しない
オフグリッドソーラーパネルの最大の利点は、外部の電力会社に依存せずに電力を供給できることです。停電が発生した場合でも、太陽光さえあれば電力を生成できます。特に災害時の長期的な停電に対して、安定した電力供給が可能です。
環境に優しいクリーンエネルギー
ソーラーパネルは太陽光を利用して電力を生成するため、二酸化炭素を排出しません。災害時だけでなく、日常的にも環境負荷の少ない電力源として利用できる点が魅力です。
ランニングコストが低い
一度設置してしまえば、ソーラーパネル自体のメンテナンスコストは比較的低く、発電にかかる費用も発生しません。蓄電池の交換などは必要ですが、長期的に見ても経済的です。蓄電池設備の法定耐用年数は6年です。
エネルギーの自給自足が可能
災害時には物流も滞りがちで、燃料などの供給も不安定になります。オフグリッドシステムなら、燃料の供給に頼ることなく、自家発電でエネルギーを確保することができます。
72時間の電力をまかなうための必要なパネル容量
72時間、外部からの供給なしで電力をまかなうためには、必要な電力量とそのために設置すべきソーラーパネルの容量を理解することが重要です。
家庭で必要な電力量の計算
例えば、以下のような用途を家電製品を災害時に使用を限定した場合。
- スマートフォン充電: 10W × 5回/日
- LEDライト: 5W × 6時間
- ポータブル冷蔵庫: 50W × 8時間
- ラジオ: 5W × 6時間
これらを合計すると、1日の消費電力は約510Wh程度になります。72時間をカバーするには約1,530Whの電力が必要です。これを満たすためには、蓄電池の容量が大切ですが、基本的なオフグリッドシステムで十分にカバーできる範囲です。
仮に一般的なソーラーパネル1枚の出力が約430W前後とした場合、2~3枚前後のソーラーパネルと蓄電池があれば、上記構成であれば非常用電源としては十分な範囲です。但し、日射量は地区により異なります。
オフグリッドソーラーパネル設置のポイント
オフグリッドソーラーパネルを設置する際には、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
適切な設置場所の確保
ソーラーパネルは、日中に十分な日光を浴びる場所に設置する必要があります。特に日本の災害時には曇りや雨が続くことがあるため、少しでも日光を確保できる場所を選ぶことが重要です。
蓄電池(バッテリー)の容量を確認
蓄電池は、発電した電力を蓄えるために不可欠です。災害時に72時間分の電力を確保するために、適切な容量の蓄電池を選定しましょう。
システムの点検とメンテナンス
災害時に備えて、定期的なシステムの点検とメンテナンスを行い、非常時にも問題なく稼働するようにしておきましょう。
災害時に役立つその他のエネルギー管理方法
オフグリッドソーラーパネルに加えて、災害時の電力管理には以下のような方法も有効です。
エネルギー効率の高い家電の使用
LEDライトや低消費電力の家電を利用することで、蓄電池の消耗を抑えることができます。
電力使用の優先順位を決める
災害時には、どの機器が最も重要で、どれが後回しにできるかを予め決めておくことが大切です。例えば、通信機器や医療機器は最優先にすべきです。
まとめ
災害時の72時間対策として、オフグリッドソーラーシステムを利用した非常用電源の導入は非常に効果的です。
外部からの電力供給が途絶えた場合でも、安定した電力を確保できるため、家族の安全や安心を確保する一助となるでしょう。オフグリッドソーラーシステムの設置を検討し、備えを万全に整えることをお勧めします。
〈参考情報〉
◆大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き
https://www.bousai.go.jp/taisaku/chihogyoumukeizoku/index.html